Dec 7, 2014

山の恵みを街へ届ける 天竜生まれの木質ペレット


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「火のある暮らし」というと思い浮かぶのが、薪ストーブ。では、ペレットストーブはご存知でしょうか。丁寧な暮らしや自然エネルギーに興味がある人の間では数年前から人気のアイテムです。燃料は木質ペレット。薪と比べて安価であり、燃料を手に入れるのも簡単なこと。煙突が短く、煤(すす)や煙が少ないので住宅地でも気兼ねなく取り入れられること。さらに女性でも取り扱いが簡単なのも人気のひみつです。

燃料となる木質ペレットは、木の粉を円筒状に圧縮したもの。森林の間伐材や製材所から出る端材やおがくずなどが原料になります。種類は大きく3つあり、木をまるごと使った全木ペレット、樹皮を含まないホワイトペレット。反対に、樹皮をメインにしたものはバークペレットと呼ばれます。ストーブの燃料のほかに、農家の温室や工場での暖房用ボイラー、アウトドアや災害用のグリルなどにも利用されます。森の環境保全やCO2 を新たに排出しないことからも、近年注目を集める自然エネルギーのひとつです。

山に抱かれた工場で、
1本の木がペレットになる

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木質ペレットを生産する工場が浜松にもあるということで、天竜区龍山にある工場を目指すことに。場所は天竜二俣から車で20分ほど。山と川に包まれた国道152号線を北上し、秋葉ダムをわたってしばらくすると、龍山森林組合に到着。目的地はそこからさらに車で3分ほど行ったところにあります。天竜美林と呼ばれ、杉やヒノキの産地として知られる龍山にペレット工場ができたのは3年ほど前のこと。間伐材を有効活用し、バイオマスエネルギーの促進を期待する浜松市によって設置されました。その運営を行っているのが龍山森林組合になります。こちらでは天竜杉の間伐材を主原料に、全木ペレットを生産しています。今回は、オペレーターの栗野さんに工場を案内していただきました。

粉砕

間伐材や製材であまった端材を1本ずつフォークリフトで粉砕機に運びます。機械の中でゆっくり回る大きな歯車が原木を粉々にしチップにします。

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乾燥

細かく裁断されたチップを乾燥させながら、さらに粉砕。原料の水分量を一定にするため、240℃の温風で乾燥させます。バイオマス熱風発生装置と呼ばれる乾燥機の燃料は、成型の途中で割れてしまったペレットを再利用。温度管理はペレットの品質を左右する重要な工程です。

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ペレタイザ(成型機)

乾燥させたチップを粒状に成型します。たくさんの穴が空いた円盤と歯車でチップを圧縮すると、ころっとした木質ペレットができあがります。接着剤は使っておらず、リグニンという木の成分がその代わりになります。100%天然なので、小さなお子さんがいても安心して使えます。

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冷却・袋詰め

できたてのペレットはベルトコンベアに乗って袋の中へ。65℃くらいとまだ温かく、風をあてて冷まします。時間にして約30分で、原木からペレットが完成。

環境保全だけではない
ペレットに託された役割

製造の工程すべて管理されている栗野さん。ペレットについてお話をお聞きしました。

「おととし、昨年と比べて、木質ペレットの需要は増えていると思います。出荷先は工場や農家の方がほとんどですが、個人の需要も少しずつ増えている気がします。おかげさまで生産は順調ですが、課題もあります。例えば、材料となる木材の確保。同じ品質の木を集めるのはなかなか苦労するところです。間伐材や製材所から受け入れた木なので、含水量に差があるんです。そのため、粉砕したチップを均一に乾燥させるのは難しく、特に気をつかって温度のコントロールをしています。ま、そこが腕の見せ所なんですけどね。ペレットはいいですよ。薪は集めるのが大変だし、特に地元産の薪となると難しい。その点ペレットは手軽。そりゃ、灯油ストーブと比べたらコストはかかるけど、成型した燃料だから火もつきやすいし炎も安定している。火のある暮らしを楽しむにはいいんじゃないでしょうか。」

「ペレットをつくることで森林を守るといわれています。流域の保全につながっているのはもちろんですが、この仕事をしていて思うのは、ペレットは中山間地域と下流の人をつなぐ役割を果たしているんじゃないかということ。街で生活していると、地元の山にこんな豊かな資源があることになかなか気づかない。でも、ペレットを届けることで山に目を向けるきっかけになってくれれば嬉しいですね。実はそんなことを思いながら仕事をしているんですよ」と少し笑いながら話してくれました。

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天竜川や浜名湖など、自然豊かといわれる浜松。それでも下流で暮らす僕たちは、普段の生活の中で自然を強く感じることはあまりありません。火のある暮らしに惹かれるのも、身近に自然を感じたいという無意識の働きかけなのかも、そんなことを感じました。龍山のペレットがつくる炎を前に、自分が住む街の自然についてちょっとだけ想いを巡らせる。せわしなく時間が過ぎていく毎日の中で、それはとても贅沢な時間の過ごし方なのかもしれません。

写真・取材・記事:大杉晃弘(写真と、企み


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